TOP > 司法試験 > 平成30年司法試験合格発表を受けて

平成30年司法試験合格発表を受けて

司法試験担当講師 北出容一

来年度司法試験一発合格を目指す方へ

1 来年の合格に向けての第一歩を踏み出す前に…

⑴ 不合格の原因は成績表には記載されません!

合格していると思ったのに合格していない、一体何故か?

成績表には席次と得点のみが記載され、不合格の原因(小問毎に何故得点が伸びなかったかの原因)は、記載されません。

⑵ 不合格の原因を知るためには再現答案が必要です!

試験の合否は、何を書いたかだけではなく、「どのように書いたか」(法律面、論理表現面ともに)にも大きく左右される以上、不合格の原因を知るためには、まずは、「できる限り忠実に再現答案を作成することが不可欠」です。再現答案がないまま、「何故落ちたのでしょうか?」と相談をされても、答えようがありません。

そこで、精神的には相当しんどいでしょうが、「不合格の原因の全てを一回で正確に把握する」ためには、まずは、再現答案を作成することが必須であると考えます。

⑶ 不合格の原因すべてを正確に把握することが大切です。

不合格の原因の把握にズレがあれば、当然のことながら、必死の努力に拘わらず合格が難しいと言えます。また、不合格の原因の一部を是正し、残部を是正しなければ、来年も不合格となる可能性が残ります。

そこで、来年度の司法試験合格に向けての第一歩として、

科目別、小問別に、
A 不合格の原因が、「法的判断面」にあるのか、

即ち、不合格の原因が、

①問いの分析ミス、小問毎の難易の見極めミス(選球眼)にあるのか、

②事案分析(事案を即時に的確に分析できない)にあるのか、

③条文選択の判断(条文外し)にあるのか、

④要件全体の処理と争点選択の判断にあるのか、

⑤答案に記載した要件効果に思わぬ誤解と欠缺があったのか

⑥論文試験によく出る基本の「あてはめ」にあるのか、

B 不合格の原因が、答案の「論理」と「表現」にあるのか、
できる限り正確に分析する必要があります。

2 次回の本試験までの限られた時間で、「不合格の原因の全て」を克服するには工夫が
必要です

もう不合格を重ねたくないなら、来年の試験までに、不合格の原因の全てを克服した上、「本試験当日に初めて見る」長文事例問題に対し、制限時間内に、1人で的確な判断を下し、且つ、それを明快な論理で、一義的に明確な表現で答案用紙に記載できる域に達する必要があります。

ところで、司法試験の成績表には得点・順位のみが表示され、合格者の再現答案にも「事案分析、条文選択の判断、争点選択の判断、解釈、あてはめの各判断過程」は記載されず、得点が伸びなかった原因自体を客観的に把握できません。

そこで、来年度の司法試験対策をするに先立ち、実務法学研究会の「再現答案分析&個人面談」制度(実務法学研究会講師が、皆さんの再現答案を採点した上、小問毎に得点が伸び悩んだ原因を分析します)を利用することをお勧めします。

詳細は、実務法学研究会事務局にお問い合わせください。

司法試験の受験回数を満了した方へ

心機一転プラス思考で捲土重来を!

捲土重来を期す場合、単に試験合格のみを目標にするのではなく、得られた法曹資格で何をしたいのか、その夢を明確にして未来に進んでください。

司法試験の受験回数を満了した場合、予備試験に合格するか、再び法科大学院の門を叩き一からやり直せば、5年5回の受験資格を得ることができます。

幸い、司法試験法によれば、司法試験も予備試験も、微に入り細に入り膨大な知識を問う試験ではなく、限られた基本と法文を使いこなし応用することができるかを問う試験です。「働きながら」予備試験や司法試験を受験することは、充分可能です。夜間開講の法科大学院も、学費の減免措置のある法科大学院もあります。

「働きながら得た社会人としての経験」は、試験の際の社会常識に基づく現場思考や合格後の実務に大いに寄与すると考えます。

但し、法曹を目指し働きながら捲土重来を果たすことを決めた場合には、大前提として、「受験回数を満了した原因の全て」を克服し、「働きながら着実に」、他を圧倒する実力をつけることが必要です。

なお、法曹実務において、依頼者・当事者にとって重要なのは、「実務に出た時点で、裁判(ないし企業法務)に必要十分な実力を現実に具備しているか、そうでないか」であって、受験期間の長短や経歴ではないはずです。

平成30年司法試験に合格された方へ

重要なのは資格自体や経歴ではなく実力・学力の実質!

司法試験合格、おめでとうございます。暫くは、司法試験に合格した者にしか分からない喜びに浸り、文字どおり「肩の荷が下りた」安堵の気持ちに心を休め、充分鋭気を養って頂きたいと思います。

検察庁、裁判所や法律事務所等が扱う事案は、全て現在進行中の生きた現実の案件であり、それを扱うチームに実力・学力が充分でない者が1人でも入れば、多忙で激しい攻防をしているチーム全体の足を引っ張り、一生の一大事を委ねている司法制度利用者の利益を大きく損ないます。

法律家の役割の多様化が進んでいますが、それでもなお、法律家が法と論理の世界で生きている以上、その実力として、第一に必要になるのは、実務における複雑な事案を分析し、条文と争点を選択し、当該ケースに即して法の解釈・適用する各判断について、コントロールが定まっていることであると考えます。