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【憲法】憲法の違憲審査基準(あてはめ)

〔回答〕 実務法学研究会講師 北出容一

憲法の違憲審査基準の目的審査(立法目的、規制目的)のあてはめについて、最低限注意するべきことを教えてください。

当該規制「目的の憲法的な重要性」を語ることが大切です。

受験生の答案でよく見かけるのは、憲法の試験問題の参照条文である「行政法(法律)の目的」をそのまま答案に記載し、その法律上の目的を憲法に照らして評価することなく、「目的が重要」、「目的が不可欠」などと断じる答案です。

しかしながら、行政法ではなく、憲法の答案である以上、目的審査においても、憲法(人権・憲法原理)に繋げてあてはめる必要があります。

特に「公共の福祉」(13条後段)の意義について内在的制約説(通説)に立つ場合、「個人の人権を制約する正当な根拠」となり得る「規制目的」は、他の個人の人権や憲法の基本原理(裁判の公正や選挙の公正等)であるはずです。

そこで、憲法の目的審査のあてはめの出発点として、最低限注意するべきことを一つあげるとすれば、

① 憲法の違憲審査の「規制目的」として、行政法(法律)の(目的)規定の「文言〔例えば交通の安全〕」を常にそのまま答案に記載するのではなく、

② 必要に応じ、行政法の目的を憲法的に評価し、「他者の憲法上の人権〔例えば歩行者の生命の権利(憲法13条)〕」として捉え直すこと(少なくともまずはそのように試みること)、

であると考えます。

なお、最高裁判所判例(≒裁判実務)は外在的制約説に立つとされていますが、外在的制約説に立つ場合であっても、他者の人権や憲法原理が規制目的になり得ることは当然のことです。

外在的制約説に立つ場合にはなおさらのこと、本件規制目的が、

① 他者の人権(憲法原理)であるのか、

② 他者の人権とは直接関わらない「公共の利益」であるのか、

を意識的に区別して、規制目的(立法目的・処分理由)の重要性・正当性を慎重に吟味する必要があると考えます。

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