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【刑法】不真正不作為犯の実行行為性の書き方

〔回答〕 実務法学研究会講師 北出容一

不真正不作為犯の実行行為性の書き方の注意点を教えてください。

同価値性説と多元説を区別して理解することが必要です。

1 同価値性説(通説、判例)とは、様々なニュアンスの違いはありますが、概ね以下のような見解です。

「⑴ 既に法益侵害結果に向かう因果の流れが現存する場合に、⑵ 結果を防止するに適した作為可能性があることを前提に、⑶ ①作為による実行行為と同価値と認められる②作為義務違反がある場合に限り、不真正不作為犯の実行行為性が認められると解する。」

 多元説とは、上記「同価値」の判断方法について、概ね以下のような見解(通説判例)です。

「上記 ⑶ の作為との同価値性は、①法律・契約の趣旨内容、②行為者の先行行為、③一旦救命を引き受けたか、④結果回避不能になるまで結果発生を排他的に支配していたか、⑤作為の容易性・困難性の程度、⑥他の結果発生防止可能者との刑事責任の配分等を総合考慮して判断すべきである。」

 採点した経験に鑑み以下の注意点を列挙します。

⑴ 書き忘れであっても「同価値」の一言が抜けるとダメージが大きいのは勿論ですが、同価値が抜ける答案が散見されること。

⑵ 作為が容易でなければ実行行為性を満たさない訳ではないこと。

⑶ 同価値性説と多元説を区別して論じること(例えば、作為可能性の「有無」と、作為の容易性困難性の「程度」を同一の次元で論じないこと)。

⑷ 多元説の③引き受けと④排他的支配を混同している答案が多いこと。

 不真正不作為犯の出題頻度が非常に高い理由は、「あてはめが難しい」ということにもありますが、あてはめ以前に「解釈論段階で誤解」している受験生が少なくないからであると推測されます。

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