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実務法学ブログ

令和2年司法試験終了後、まずは再現答案を!
(但し、健康上の問題がない範囲で)

1 司法試験論文試験の再現答案を見なければ分からないこと

何を書いたかだけではなく「どう書いたか」の重要性

司法試験論文試験は、専門的学識のみならず「論述の能力」をも判定するものである以上(司法試験法3条2項参照)、司法試験の合否は、「何を書いたか」(条文選択の判断、争点選択の判断)だけではなく、「どう書いたか」(各要件の解釈・あてはめ・論理表現)によっても大きく左右されます。

「どう書いたか」については、各科目の基本的な要件効果の記載の正確・不正確、あてはめ・事実摘示の書き方の適否(狭義の法律学の適否)のみならず、国語的論理的に分かり易いか・普通か・分かりにくいか・論理矛盾、論理破綻を来していないか等の点も非常に重要です。

確かに、「何を書いたか」は、答案構成用紙を見ればある程度は分かるかも知れません。これに対し、「どう書いたか」については、合格発表後に、薄れ行く記憶に基づき口頭で説明されても容易には推測できず、再現答案を見なければ判断し難いのです。

正確な再現答案があれば、条文選択の判断、要件全体の処理、争点選択の判断等「何を書いたか」がより具体的に分かるのはもちろん、ケースの特殊性等に即してどのように法律を解釈しあてはめて解答をしたのか、それらの論述に論理矛盾や論理の飛躍がないか、各表現の「国語的適否」等、「どう書いたか」についても、かなりの確度でその当否や今後の課題を判断することができます。

2 再現答案を作成しない受験生が、再現答案を作成しない理由

試験直後は再現するのが恐しく、発表後は忘却している

司法試験受験生に対し、試験直後に再現答案の作成を勧めると、今は現実を直視するのが恐くて(ミスを発見するのが恐くて)とても再現できないと言われ、合格発表後に再現答案の作成を勧めると、もう忘れてしまって正確に何を書いたか思い出せない、といわれることがあります。

3 体力・健康の許す範囲で、できるだけ早く再現答案作成を!

時が経つほど再現は不正確となります

基本問題・応用問題ともに、解釈(規範的率)あてはめの論理過程・国語的表現について、詳細な記憶を維持するのは、容易ではありません。

例年ですと、「休息は後でもできるので即刻再現答案作成を!」というところですが、昨今の社会情勢では、いま何より優先するべきは健康・生命(憲法13条)の維持であることは言うまでもありません。

健康上無理がない限り、できるだけ早めに再現答案を作成されることをお勧めします。

4 プラス思考で将来のため、今、現実を直視する勇気を!

合格して法曹実務家になれば、相手方代理人の強烈な準備書面や、人の一生を背負った事件の判決を日常的に直視しなければならないのであって、その時に不可欠となる「強い心臓」(あるいは開き直り等何らかの方法で冷静な心理状態を維持する能力)に鍛えるためにも、今、現実を直視するメリットがあります。

他方、もし、合格していない可能性があるならば、できるだけ早く再現答案を正確に分析して「次回で合格を決めるための課題」を他者に先んじて明瞭にできるメリットもあります。

この時期に自分のミスを発見した場合には、一定のショックはあるでしょうが(労せずして)、正しい答えを明瞭に記憶できると思われます。

何れにせよ、将来のため、今、現実を直視する勇気を持てば、リターンは大きいと考えます。

発表直後ミスに気づくのが恐いという気持ちは(痛いほど)分かりますが、以上のとおり、早めに再現答案を作成する必要性・メリットは明らかに高いといえますので、プラス思考で、お早めに、再現答案を作成する強制の契機を作るなどして、再現答案作成に、まずは着手されることをお勧めします。

但し、繰り返しになりますが、健康上、無理がない範囲で、まずは十分な休息を!

(再現答案作成に、皆様の健康を損なうほどの価値はありません! 再現答案には上述のメリットはありますが、再現答案を作成しないで合格した人は何人もいます。それ故、再現答案を作成できなくでも焦らないでください。)