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令和3年司法試験論文試験対策について
(北出容一の実務法学ブログ)

1 令和3年司法試験論文試験対策、例年以上に作戦が重要!

令和2年司法試験の論文試験の合格発表は、例年より大幅に遅く、令和3年1月20日ですので、令和3年司法試験論文試験合格に向けて、例年以上に作戦・手段方法が重要となります。

2 刑法・刑事訴訟法・民事訴訟法の論文試験対策

⑴ この3科目は、論文試験によくでる基本の要件効果(キーワード等)の理解・記憶に過誤欠缺があった場合のダメージが特に大きいと言えます。

⑵ また、刑法・刑事訴訟法・民事訴訟法は、あてはめの優劣が特に合否に直結し易いと言えますが、要件効果の理解・記憶が甘いと、当然そのあてはめについても大量失点のリスクが大きくなります。

⑶ そこで、令和3年司法試験論文試験対策として、まずは、刑法・刑事訴訟法・民事訴訟法の論文試験によく出る基本について、短期間に確実に、誤解欠缺・不正確を一掃することに重点を置くことが必須です。

⑷ 民事訴訟法は、非典型分野からも出題されますが、手続法故、全く知識がないと(条文を引けるだけでは)苦しいと思います。民事訴訟法の非典型分野については、薄めの基本書で、総論部分と主要な制度・大凡の条文の位置を把握しておくことが必要です。

3 憲法・行政法の論文試験対策

⑴ 憲法・行政法は、論文試験の頻出分野に関する限り、覚えなければならない事項は少ないと言えます

ただ、その少ないことが不正確であれば、ダメージは大きいと言えます。

⑵ 憲法の論文試験対策として効果的なのは、本年5月の試験までに、以下の事項についてツボを押さえ、集中的に演習することであると考えます。

① 目的審査・関連性審査・特に手段審査のあてはめ

(立法事実を踏まえてあてはめる能力を含む)

② 当該憲法問題の実質的争点を的確に見いだすこと、

(闇雲に争点を作ると理解不足が露呈し当然時間不足にもなります)

⑶ 行政法の論文試験対策として特に重要なのは、言うまでもなく、

①抗告訴訟の訴訟要件のあてはめ、

②行政裁量の有無・行政裁量の逸脱濫用のあてはめ

③行政裁量がない場合の個別法の要件・効果の現場解釈能力、

を短期集中的に鍛えることです。

④手続法等それ以外の分野については、最低限は書けるように効率的に穴をなくしておくことが必要です。

4 民法・商法の論文試験対策

⑴ 民法・商法(会社法)は、条文数は膨大ですが、論文試験の主要論点になる条文・要件・効果(論文試験によく出た基本)は、相当限られています。

⑵ ただ、民法・商法は、その限られた範囲で確たるポリシーを持って条文選択の判断をなし得ることが極めて重要です。

その上でなお時間があれば、できる範囲で、更に限られた範囲で頻出要件のあてはめ対策をすることが有益です。

⑶ 民法、特に商法(会社法)は、如何なる事案で、誰が、何を、どの順番で検討・主張・立証するべきなのか、最低限の要件事実論を意識した思考パターン・答案パターンの鉄則を固めると、試験でも実務でも有益であると言えます。

⑷ 民法・商法も、非典型分野からも出題されますが、分量との関係で、民法商法について基本書等で穴をなくすことは相当困難です。次善の策として、民法は短答試験対策の知識を利用し、商法は条文を手がかりに(行政法の個別法の解釈のように)現場で要件を定立してあてはめる現場解釈能力を鍛えます。

5 司法試験論文試験のマイナー分野対策の優先順位

①民事訴訟法、②行政法、③リーガルクエスト会社法(有斐閣大杉教授他)③刑訴の新しい制度、④過去問のマイナー分野の小問について六法のみを手がかりに落ちない答案をコンパクトに書く「能力・ノウハウ」を研究する、

という順番であると思われます。

本来は、全ての科目について基本書等で「穴をなくすよう勉強」をしておくことが理想ですが、それは現実には困難であり、特に直前にあれもこれも手を広げると、肝心の論文によく出る基本が頭に入らなくなります(基本も細部もすらすら答えられるライバルは極めて少数と思います)。

6 司法試験の論文試験答案の論理・表現の重要性

司法試験論文試験対策として、答案の論理・表現に充分注意し、然るべき対策を立てる必要があります。司法試験論文試験の答案の論理・表現が、A分かり易いか、B普通か、C分かりにくいか、D論理の矛盾飛躍・国語的な誤りがあるかによって、同じ条文・論点・事実を拾っていても、結果は多いに異なるものとなります。

7 過去問・判例百選等

どの程度過去問や百選を検討するべきかは、その科目の特性、過去問や百選を検討する目的、受験生の学力・進度、試験までに残された時間にもよります。

試験までの期間が短い以上、過去問や判例百選を当該受験生の当該科目の学力向上に必要な範囲で、最も効果的に活用できるのか否かがポイントとなります。